今回は『薬が作用する仕組み』について勉強していきます!
今回の分野は薬理学を学ぶ上でも重要な内容となっているのでしっかり理解していきましょう!
薬力学と薬物動態学
薬物が体内でどのように働くか、そして体にどのように影響を与えるかを理解することは、看護師にとって重要な知識です。その中心となる考え方が『薬理学』ですが、薬理学は大きく分けて『薬力学』と『薬物動態学』に分類することができます。
薬力学
薬力学は、薬物が体に与える影響、つまり薬物の効果や作用メカニズムを研究する分野です。
薬がどうやって体(生体)に影響して、効果が出てくるのかっていうことやね。
受容体と薬物の関係:
- 薬物は体内に入ると、特定の受容体と呼ばれるものに結合することで作用します。受容体は細胞の表面や内部に存在し、薬物が結合することで特定の反応が引き起こされます。
作用機序:
- 薬物がどのようにして効果を発揮するかの具体的なメカニズムを指します。これは、受容体に結合して起こる生化学的な反応や、体内で起こる一連の流れのことです。
効果と副作用:
- 薬物の主な効果(治療効果)と、副作用(望ましくない効果)について理解することが重要です。理想的な薬物は高い治療効果を持ち、副作用が少ないものです。
薬物動態学
薬物動態学は、薬物が体内でどのように動くか、つまり薬物の吸収、分布、代謝、排泄の過程を研究する分野です。
薬物動態学は、薬力学とは反対に体(生体)が薬に対して及ぼす影響のことで、もっとわかりやすく言うと、薬が体に入ってから外に出るまでの『道のり』のことやね。
薬物動態学でとても重要な概念に『ADME』というものがあります。
ADME(アドメ)とは?
ADMEとは、薬が体内に取り込まれてから排泄されるまでの4つの過程、それぞれの頭文字をとったものです。
- 吸収(Absorption): 薬が体内に取り込まれる過程
- 分布(Distribution): 薬が血流に乗って体内の各組織に運ばれる過程
- 代謝(Metabolism): 薬が体内で化学的に変化(分解や活性化)する過程
- 排泄(Excretion): 体内から薬が排出される過程
これらの4つの過程をしっかり理解することが、薬物動態学を学ぶ上で重要です。それぞれの過程が薬にどのように影響するのか見てみましょう。
吸収:
- 薬が投与されてから体内に吸収される過程です。経口薬の場合、胃や腸から血流に吸収されます。
- 例: 錠剤やカプセルは消化管から吸収され、血流に乗って全身に運ばれます。
分布:
- 吸収された薬が血流を通じて全身の組織や臓器に分布する過程です。
- 例: 血液中の薬物が脳、肝臓、腎臓などのターゲット組織に到達します。
代謝:
- 薬が体内で化学的に変化する過程です。主に肝臓で行われ、薬が活性化されたり、不活性化されたりします。
- 例: 一部の薬物は肝臓で代謝されて活性化し、効果を発揮します。
排泄:
- 代謝された薬やその代謝物が体外に排出される過程です。主に腎臓を通じて尿中に排出されます。
- 例: 不要な薬やその代謝産物が腎臓を通じて尿として排泄されます。
以上が『ADME』の基本的な内容です。各過程に関与する臓器や詳細な内容については、別の記事で詳しく説明します。
薬力学について
簡単に『薬力学』と『薬物動態学』について触れましたが、今回は薬力学についてもう少し詳しく説明していきます。
薬物と標的(作用点)の関係
薬力学の中心的な概念の一つが、薬物と標的(作用点)の関係です。標的となる代表的なタンパク質に以下の4つが挙げられます。
標的
- 受容体
- イオンチャネル
- 酵素
- トランスポーター
また、薬物がどの程度正しい標的に結合できるかという程度を『特異性』という。
特異性が低いと、目的以外の標的に作用して副作用の原因にもなるから注意が必要!
受容体
受容体とは、ホルモンや神経伝達物質(ノルアドレナリン、アセチルコリンなど)が結合するタンパク質で、この受容体にホルモンや神経伝達物質が結合することで、様々な細胞内反応を引き起こします。
受容体の種類
- イオンチャネル内蔵型受容体
- Gタンパク質共役型受容体
- キナーゼ連結型受容体
- 核内受容体
受容体の詳しい説明に関しては下記の記事を参考にして下さい↓↓
イオンチャネル
イオンチャネルは、細胞の表面にあるタンパク質で、小さな『門』のようなものです。この『門』が刺激を受けることで開いたり閉じたりして、特定のイオン(ナトリウム、カリウム、カルシウムなど)が細胞の中に入ったり、外に出たりします。
イオンチャネルの種類
- リガンド依存型イオンチャネル
- 膜電位依存型イオンチャネル
酵素
酵素とは、体内でさまざまな化学反応を助けるタンパク質です。
薬効に関わる重要な酵素
- シトクロムP450(CYP)
- アンギオテンシン変換酵素(ACE)
トランスポーター
トランスポーターとは、細胞膜上にある、生体内の様々な物質を輸送するタンパク質です。物質の濃度が高い方から低い方に濃度勾配に従って物質を移動させる『受動輸送(促進拡散)』と、エネルギーを使用することで濃度勾配に逆らって物質を移動させる『能動輸送』があります。
薬の標的になる代表的なトランスポーター
- SGLT2(ナトリウム・グルコース共輸送体2, Sodium-Glucose Cotransporter 2)
- Na⁺/K⁺/2Cl⁻共輸送体(NKCC2)
イオンチャネル、酵素、トランスポーターについての詳しい説明は下記の記事を参考にして下さい。↓↓
まとめ
今回は、薬理学を勉強する上で重要な、『薬力学』と『薬物動態学』の基礎について触れました。
薬力学では、薬と標的(作用点)の関係がとても重要であり覚えることがたくさんあります。別の記事で『受容体』や『イオンチャネル』などの標的についても詳しく説明します。
また、薬物動態学でも『ADME』に関して詳しく解説していくのでそちらを参考にして下さい。
では、本日もここまで読んで勉強していただきありがとうございました。