標的(作用点)について💊〜イオンチャネル・酵素・トランスポーター編〜

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今回は、標的(作用点)で少し触れた『イオンチャネル、酵素、トランスポーター』について詳しく解説していこうと思います。

受容体、イオンチャネル、酵素、トランスポーターの基礎的な内容や、受容体(Gタンパク質共役型受容体)の詳しい内容に関して勉強したい方は、以下の記事も参考にして下さい!

↓『受容体、イオンチャネル、酵素、トランスポーターの基礎的な内容』の記事はこちら

↓『受容体(Gタンパク質共役型)に関しての詳しい内容』の記事はこちら

目次

イオンチャネル、酵素、トランスポーターとは?

私たちの体の中では、細胞が絶えず情報をやり取りし、エネルギーを使って活動を続けています。この過程で重要な役割を果たすのが、イオンチャネル酵素、そしてトランスポーターです。これらは細胞が正しく機能し、体内の環境を一定に保つために欠かせない「働き者たち」です。

イオンチャネル

イオンチャネルは、細胞膜を通じてイオンを出入りさせる通り道です。イオンはナトリウム(Na+)、カリウム(K+)、カルシウム(Ca2+)、クロライド(Cl-)など、電荷を持つ小さな粒子のことを指します。イオンチャネルはこれらのイオンを必要なときに必要な量だけ細胞内外に移動させるため、神経の伝達や筋肉の収縮、心臓の鼓動に重要な役割を果たします。

  • 働き: イオンチャネルが開閉することで、細胞内外のイオン濃度や電気的なバランスを調整し、神経伝達や筋肉の興奮を制御します。
  • : ナトリウムチャネルは神経細胞の興奮に関与し、カルシウムチャネルは心筋や骨格筋の収縮に重要です。

イオンチャネルの種類

イオンチャネルには大きく分けてガンド依存性イオンチャネル膜電位依存性イオンチャネルの2種類があります。これらのチャネルは、開閉のメカニズムや体内での機能が異なります。

①リガンド依存性イオンチャネル

リガンド依存性イオンチャネルは、特定の化学物質(リガンド)がチャネルに結合することで開閉するイオンチャネルです。リガンドが結合することでチャネルが開き、イオンが細胞内外を通過します。これにより、神経伝達や筋収縮が引き起こされます。

イブしろ

これは受容体の記事でも出てきた、『イオンチャネル内蔵型受容体』と同じものやね。

代表的なリガンド依存性イオンチャネル:

  1. ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR): アセチルコリンが結合するとナトリウムイオンが流入することで脱分極を起こし、NM受容体では骨格筋の収縮が起こり、NN受容体では神経系の興奮を伝達する役割を果たします。
  2. グルタミン酸受容体(AMPA、NMDAなど): グルタミン酸が結合することでカルシウムやナトリウムイオンが流入し、神経の興奮を引き起こします。
  3. GABAA受容体(GABA_A): GABAが結合するとクロライドイオンが流入し、神経の抑制作用を引き起こします。

関連薬:

  • ドネペジル: アセチルコリンエステラーゼ阻害薬で、アルツハイマー病の治療に使用されます。
  • メマンチン: NMDA受容体を阻害し、過剰なカルシウムイオンの流入を抑制することで神経細胞障害や記憶・学習障害を抑制してアルツハイマー病の治療薬として使用されます。
  • バルプロ酸: GABA受容体に作用し、脳内神経の異常な興奮を抑制することで、抗てんかん薬として使用されます。

膜電位依存性イオンチャネル

膜電位依存性イオンチャネルは、細胞膜の電位変化によって開閉するイオンチャネルです。細胞の膜電位が一定の閾値に達するとチャネルが開き、イオンが移動することで電気的な信号の伝達が行われます。これにより、神経インパルスの伝達心筋の興奮が調節されます。

代表的な膜電位依存性イオンチャネル:

  1. 電位依存性ナトリウムチャネル: 神経細胞の活動電位を伝える際に、ナトリウムイオンを細胞内に流入させます。
  2. 電位依存性カルシウムチャネル: 心筋や骨格筋の収縮を引き起こすためにカルシウムイオンを細胞内に流入させます。
  3. 電位依存性カリウムチャネル: 神経や筋肉の興奮を収束させるためにカリウムイオンを細胞外に流出させます。

関連薬:

  • リドカイン: 電位依存性ナトリウムチャネルを遮断し、局所麻酔薬として使用されます。
  • アミオダロン: 電位依存性カリウムチャネルを抑制し、不整脈の治療に使用されます。
  • ニフェジピン: 電位依存性カルシウムチャネルをブロックし、高血圧や狭心症の治療に使用されます。

酵素

酵素は、体内の化学反応を加速させる触媒として機能します。次に、代表的な酵素とその関連薬を紹介します。

代表例と薬に関する情報:

  1. アセチルコリンエステラーゼ
    • 働き: 神経伝達物質であるアセチルコリンを分解。
    • 関連薬: ネオスチグミンはアセチルコリンエステラーゼを阻害し、重症筋無力症の治療に使われます。
  2. アンジオテンシン変換酵素(ACE:エース
    • 働き: 血圧を上昇させるアンジオテンシンIIを生成。
    • 関連薬: エナラプリルなどのACE阻害薬は、高血圧や心不全の治療に使用されます。
イブしろ

『ACE』を阻害する薬は、血圧だけではなく心不全でもよく使用されます。但し、副作用として『空咳』が出てくる可能性があるので注意しましょう。ただ、最近では血圧の高い嚥下機能が低下して誤嚥性肺炎のリスクがある患者さんに、あえて『空咳』を起こすACE阻害薬を誤嚥性肺炎の予防を目的も兼ねて使用することもあります。

3.シクロオキシゲナーゼ(COX:コックス)

  • 働き: 炎症や痛みの原因となるプロスタグランジンの生成に関与。
  • 関連薬: アスピリンイブプロフェンはCOXを抑制し、抗炎症や鎮痛効果を発揮します。
イブしろ

ちなみに、NSAIDs(アスピリンやロキソプロフェン)を使用したときに、胃が痛くなることがあるのは、NSAIDsが胃粘膜を保護するプロスタグランジン(COX1)も阻害して、胃が荒れてしまうからやね。NSAIDsの使いすぎには注意しましょう!

トランスポーター

トランスポーターは、細胞内外の物質の移動を調整します。以下はその代表例と関連薬です。

代表例と薬に関する情報:

  1. ナトリウム-カリウムポンプ
    • 働き: 細胞内外のナトリウムとカリウムの濃度を維持。
    • 関連薬: ジゴキシンはこのポンプを抑制し、心不全や不整脈の治療に使われます。
  2. グルコーストランスポーター(SGLT2)
    • 働き: 腎臓でのグルコースの再吸収を調整。
    • 関連薬: エンパグリフロジンなどのSGLT2阻害薬は、糖尿病の治療に使用され、尿中に糖を排出させます。
イブしろ

SGLT2阻害薬は、糖尿病治療薬として開発されましたが、心不全でもよく使用されており、心不全治療薬の中でも
『fantastic four』と呼ばれ注目を集めました。

3. セロトニントランスポーター(SERT)

  • 働き: 脳内でのセロトニンの再吸収を調整し、気分に影響を与えます。
  • 関連薬: フルオキセチンなどのSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、うつ病や不安障害の治療に使用されます。

まとめ

イオンチャネル、酵素、トランスポーターは、体内の重要な役割を果たしており、それぞれに関連する薬が多くの疾患治療に利用されています。これらの知識を理解することで、薬物療法のメカニズムを深く学び、患者への適切なケアに役立てることができます。

受容体同様、覚えることが多くて大変ですが、医療の現場では、薬物の作用機序を理解することが、効果的かつ安全な治療を行う上で非常に重要です。看護師として、患者に投与する薬の働きやその背景にある生理的メカニズムを深く理解することで、患者の状態を正確に把握し、適切な判断を行うことが求められます。イオンチャネル、酵素、トランスポーターは、単に薬の標的となるだけでなく、体内での恒常性維持や情報伝達においても極めて重要な役割を果たしています。これらの知識を習得し活用することで、看護師としてのスキルを向上させ、より質の高いケアを提供できるようになります。さらに、臨床現場での経験を通じて、これらの理論を実践に結び付けることで、より深い理解と応用力が身につくことでしょう。今後も、日々の学びを大切にし、患者さん一人ひとりに寄り添った看護を提供していくための基盤を築いてください。

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