【苦手克服】看護師に必要な薬理学の知識と効率の良い勉強法

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薬剤師が考えるこれから求められる看護師とは?

患者さんの安全を守るために、看護師にも薬の知識が必須!その理由を薬剤師目線で詳しく解説します。

この記事を書いた人
イブしろ

いぶしろ
総合病院で薬剤師として10年以上勤務/看護学校非常勤講師     

所持資格:薬剤師(抗菌化学療法認定薬剤師、糖尿病療養指導士)、危険物取扱免許(乙種全種)、第二種電気工事士

趣味:家族で旅行/食べ飲み歩き/お金について考えること

最近チャレンジしていること:Webデザイナー、ファイナンシャルプランナー

薬理学の基礎知識看護師国家試験問題についても解説しているので、興味のある人は是非そちらの記事もチェックしてみて下さい!

目次

看護師にも薬の知識(薬理学)は必要か?

結論から言うと、看護師も薬の知識(薬理学)が必須だと考えています!
その理由を以下にまとめました。

看護師に薬の知識(薬理学)が必要な理由

  • 患者さんの安全を守るため【患者の安全確保とリスク管理】
  • 医療チーム内でのスムーズな連携【医師や薬剤師と上手に連携するため】
  • 患者教育と服薬指導患者さんに薬のことを分かりやすく説明するため【患者の安全確保とリスク管理】

それぞれの理由について解説していきます。

患者さんの安全を守るため【患者の安全確保とリスク管理】

薬理学の知識は、患者の安全を守るために欠かせません。看護師は、薬の投与や管理を担当するため、薬の作用機序、副作用、禁忌事項を理解しておく必要があります。これにより、患者が副作用を起こした際の早期発見や、薬の過剰投与などの医療事故を未然に防ぐことが可能になります。特に、高リスク薬(抗凝固薬、インスリンなど)の管理では、正しい知識が不可欠です。

医療チーム内でのスムーズな連携【医師や薬剤師と上手に連携するため】

看護師は医師や薬剤師と連携して患者のケアを行います。その際、薬の知識があると、医師の指示の意図を正しく理解したり、薬剤師と疑義照会を効果的に行ったりできます。薬の適切な使い方を共有し、患者に最適な治療を提供するためには、看護師が薬理学を理解していることが重要です。

患者教育と服薬指導患者さんに薬のことを分かりやすく説明するため【患者の安全確保とリスク管理】

看護師は患者やその家族に対して、薬の使用方法注意点を説明する役割を担います。薬理学を学ぶことで、薬の効果副作用について具体的かつ分かりやすく説明できるようになります。これにより、患者が薬を正しく使用し、治療効果を最大限に引き出すことが可能になります。また、服薬アドヒアランス(患者が医師の指示通りに薬を使用すること)の向上にもつながります。

これらの理由から、看護師にとって薬理学の知識は、患者ケアの質を向上させるうえで不可欠なスキルといえます。

看護師に求められる薬学知識の具体例

看護師として日々の業務でよく関わる薬の中には、患者さんの症状を緩和するための重要なものが多く含まれます。たとえば、痛みや炎症を抑えるために使用される鎮痛薬(NSAIDs)や、不眠症状を改善するために使用される不眠治療薬など挙げられます。これらの薬は、適切に使用することで患者さんのQOL(生活の質)を大きく向上させることができますが、一方で誤った使い方をすると、副作用や健康被害のリスクが高まることもあります。以下では、日常業務でよく使われる薬について、看護師が知っておくべきポイントを具体的に解説します。

鎮痛薬(NSAIDs)

鎮痛薬は、頭痛や関節痛など、さまざまな痛みを和らげるために頻繁に使用されます。

よく使用される鎮痛薬(NSAIDs)

  • ロキソプロフェンナトリウム(ロキソニン®)
  • ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン®)
  • セレコキシブ(セレコックス®)

一部のみ記載

看護師が注意すべき点

  • 副作用: NSAIDsは、痛みや炎症を抑える効果がある一方で、胃の粘膜を傷つけることで胃潰瘍消化管出血のリスクを高めます。また、腎臓の血流を減少させるため、腎機能が低下している患者さんには使用を控える場合があります。
  • 観察ポイント: 患者さんが「腹痛」や「黒色便」を訴えた場合、消化管出血が疑われます。このような症状が見られた際は、すぐに医師へ報告し、適切な処置が行えるよう準備しましょう。

副作用が起こる理由と対処方法:

NSAIDsはプロスタグランジンという物質の生成を抑えることで効果を発揮します。プロスタグランジンは、痛みや炎症を引き起こすだけでなく、胃の粘膜を保護し、腎臓の血流を維持する役割も果たしています。そのため、プロスタグランジンの生成が抑えられると、胃粘膜が傷つきやすくなり、腎機能も低下しやすくなるのです。

【対処方法】

  • 胃を保護する薬剤(プロトンポンプ阻害薬など)を併用することで、胃潰瘍や消化管出血のリスクを軽減できます。
  • 腎機能が低下している患者さんには投与を避ける、あるいは投与量を調整することも重要です。

不眠治療薬

不眠治療薬は、睡眠の質を改善し、患者さんの疲労回復を助けます。

よく使用される不眠治療薬

  • フルニトラゼパム(サイレース®):ベンゾジアゼピン系
  • エスゾピクロン(ルネスタ®):非ベンゾジアゼピン系
  • レンボレキサント(デエビゴ®):オレキシン受容体拮抗薬
  • ラメルテオン(ロゼレム®):メラトニン受容体作動薬

注)一部のみ記載

看護師が注意すべき点

  • 副作用: 眠気やふらつきが日中に残ることがあり、高齢者では転倒リスクが増加します。またベンゾジアゼピン系の不眠治療薬はせん妄を起こす可能性もあるため高齢者に使用する際は注意が必要です。
  • 観察ポイント: 患者さんの睡眠の質や翌日の活動状況を確認し、副作用が現れていないかをチェックします。

ベンゾジアゼピン系及び非ベンゾジアゼピン系不眠治療薬の作用機序

ベンゾジアゼピン系の薬は、GABA受容体の一部であるベンゾジアゼピン結合部位に結合します。この結合により、GABAの作用が強化され、さらに多くの塩化物イオンが神経細胞内に流れ込みます。その結果、神経の興奮が強力に抑えられ、不安が軽減されて眠りにつきやすくなります。

非ベンゾジアゼピン系の薬も同じくGABA受容体に作用しますが、ベンゾジアゼピン結合部位とは少し異なる部位に結合します。
このため、効果は似ているものの、眠気を引き起こす作用を有し、筋弛緩や依存のリスクが比較的少ないとされています。

その他の不眠治療薬の作用機序や特徴、臨床での使用感などは別の記事を出す予定です。

このように、副作用が起こるメカニズムを理解することで、適切な対策が取れるようになります。看護師として患者さんの安全を守るためには、薬理学の知識を日々の業務に活かすことが大切です。

学び方のヒント: 薬学知識を深めるための勉強法

薬学の知識を深めることは、看護師としてのスキルアップに直結します。以下では、無理なく効率的に薬学を学ぶための方法をご紹介します。

効率的な勉強法

病態別・種類別に薬をグループ化する

たとえば、心不全でよく使われる薬、感染症に使われる薬といったように、病気ごとに薬を覚えると関連性が理解しやすくなります。また、薬の名前も覚えにくいものが多いので、一つ一つ覚えようとせず種類別に特徴を捉えると効率よく覚えることができます。

イブしろ

薬の名前は、種類によって共通の文字が入ることがあるので、その文字を覚えると覚える量が少なくすみます!

心不全や降圧薬として使用されるアンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)
・〜サルタン:アジルサルタン、イルベサルタン、オルメサルタン

感染症に使用される抗菌薬(マクロライド系)
・〜マイシン:アジスロマイシン、エリスロマイシン、クラリスロマイシン

看護場面に直結する知識に絞る

すべての薬を詳細に覚えるのは難しいですが、日常的に使用する薬から優先的に学ぶことで、実践に役立てることができます。鎮痛薬不眠治療薬は使用頻度が高く、特に鎮痛薬は一般用医薬品(OTC)としてドラッグストアでも購入可能です。そのため、看護師だけでなく、患者さんにとっても身近な存在となっています。

イブしろ

一般用医薬品(OTC)の鎮痛薬を購入するには条件が必要な場合もあるので、OTCについてまとめた記事を参考にするとさらに理解できます!

ケーススタディで学ぶ

実際の患者事例を想定して、『この患者さんにはどの薬が適切か?』『副作用のリスクは?』といった視点で学ぶと、理解が深まります。特に看護学生は厳しい実習を通じて患者さんに関わる機会が多いため、その貴重な経験を活かすことで、効率的かつ実践的に薬学を学ぶことができます。

推奨リソース(おすすめの資源)

書籍『今日の治療薬』

薬剤の基本情報が網羅された看護師や医療従事者にとってのバイブルとも言える一冊です。

特徴

  • 薬の作用機序や用法・用量が詳細に記載
    薬剤の作用メカニズムや、適切な投与量について簡潔かつ正確な情報を提供します。
  • 病態別に薬剤が分類されている
    病気ごとにどの薬が使われるのかが一目でわかるため、看護業務での応用が容易です。

活用方法

実習中や業務中に、「この症状にはどの薬が使われるのか?」といった疑問が浮かんだ際に参照することで、即座に正確な情報を得ることができます。また、国家試験対策にも非常に役立ちます。

ウェブサイト:「PMDA」

オンラインで薬学情報を得るには、信頼性の高いウェブサイトを利用することが重要です。

PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)

  • 薬の添付文書を簡単に検索できる公式サイトです。
  • 添付文書には薬の詳細な情報(適応、用法、警告など)が記載されており、患者さんに説明する際にも活用できます。

まとめ: これから求められる看護師像とは?

これからの医療現場では、看護師に求められる役割がますます広がり、多様化していくことが予想されます。その中で、薬剤師として特に重要だと考えるのは、次の3つの能力です。

  • 薬学的知識の活用力
  • 患者中心のケアを実践する力
  • チーム医療での積極的なコミュニケーション

薬学的知識の活用力

看護師が薬の作用や副作用を深く理解し、患者さんの状態に応じて適切なケアを提供できることは、チーム医療の中で大きな価値を持ちます。薬剤師との連携を円滑に行うためにも、薬学知識の基礎をしっかり身につけることが重要です。

患者中心のケアを実践する力

薬物療法の効果を最大限に引き出すためには、患者さん一人ひとりのニーズや背景を理解したケアが必要です。患者さんの生活や価値観を尊重しながら、薬剤の使用や服薬指導をサポートできる看護師が求められます。

チーム医療での積極的なコミュニケーション

医師、薬剤師、他の医療スタッフと連携しながら、患者さんに最適な治療を提供するためには、コミュニケーションスキルが不可欠です。疑義照会や情報共有を積極的に行い、チーム全体で患者さんを支える姿勢が重要です。

これらのスキルを身につけた看護師は、今後の医療現場で欠かせない存在となります。患者さんの安心・安全なケアを提供しつつ、他職種と連携して医療の質を向上させるために、ぜひ日々の業務や学びの中でこれらの力を養ってください。

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